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畏友、羨友(戦友) 
中西久二君の死を悼む
 、
中西久二:
昭和3年8月生  平成21年11月逝去
昭和28年北大農学部卒業 農林省畜産局食肉鶏卵課勤務


1.鶏卵の安定供給のため液卵公社設立の企画に参画

 戦後の食糧難の時鶏卵は貴重品だったが、供給が増加するに従い、価格変動 激化、供給不安定となり、対策として液卵公社の設立が企画される。

「鶏卵の価格変動」
季節変動・・・・12月、1月、4月 上昇  6〜8月 下落
エッグサイクル・・・約8年毎に上昇下落繰り返す
不需要期に買い入れ需要期に放出して価格と需給の安定を図ることとする

「食肉鶏卵課長と中西君が企画推進」
大蔵省主計局説得 予算承認受け
都道府県説得、生産者団体(全農、全日本鶏卵販売農業協同組合連合会など)説得
予算初認受けしたら都道府県生産者団体、加工業者(味の素、キューピーマヨネーズ)へ出資要請
自治省へ地方交付金の算定基礎に入れるように説得  等々


2.液卵公社発足

  取締役(実質専務---責任者)就任
「『この仕事は君にしか出来ぬ』と破格の若さ(43歳:通常47〜48歳)で抜擢され退職、取締役に就任。公務員としての身分保障はなくなり、退職金、年金等夫婦で相当の覚悟をされたことと思います」----旧部下のお話

鶏卵価格の激しい変動と、それに応じた買い入れ売却の規模とタイミング、予算措置等複雑な連立方程式様な運用業務に当たる。

 

3.産地鶏卵格付け包装施設の開設  
 (グレーディング・アンド・パッキング センター)

  :略称GPセンター
  
 業者と協力していろいろなアイディアを出し大変な試行錯誤の結果完成

 洗卵・・・・洗剤の入った槽につけてブラッシング
  ↓
 検卵・・・・ベルトコンベアに載せ暗室で透かし検査
  ↓
 選別・・・・L・Mのサイズのランク付け
  ↓
 パック詰め・・・極薄ビニールパックに吸盤で持ち上げ入れて包装
  ↓     コストダウンに著効
 箱詰め
  ↓
 出荷

これらの一連の作業を機械化システム化して、農村(産地)で行うモデル事業の立ち上げに成功。これによってコストは大幅に下がり価格は低位安定し、物価の優等生になる。


4.大蔵省主計局に対しても、上司に対しても、臆することなく正論を吐く、研究心旺盛な勉強家であり、反対派の人からも一目置かれ尊敬される存在

追記:
数年前より呼吸器疾患を患い、酸素ボンベを手放せぬ生活になったが、友人、知人、娘婿などを枕元に呼び、社会問題、教育問題など、談論風発、会話に花を咲かせ、研究心も衰えることがなかったという。

昨年5月には夫人との金婚式で一族集合、歌い、喋り、楽しい一刻を持った。
昨年末、長女の家族と箱根に旅行、酸素ボンベを湯船の横に置き、長女の女婿と湯船に浸かる。

夫人は二科会の閨秀画家。一昨年は銀座で個展を開催。昨年10月にはグループ展(玄奏展)に出典されたが、最後の外出で鑑賞。

昨年11月、ご家族に背中をさすって貰いながら眠るような最後であったとか。


仕事といい、家庭といい、まさに羨ましい一生だったというべきか