名幼47期感想(増岡君)
軍神を交えた東幼38期第6学班

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萬世に燦たり 平成18年5月発刊

陸士53期同期生会では、現在西宮生徒監が代表世話人を務めておられるが、このほど同期生会で「萬世に燦たり」という題で、先の大戦で戦没された同期生で、二階級特進の栄誉に輝いた十四軍神を中心とした鎮魂の書を刊行された。
十四軍神とは次の方々である。

江浪康彦:コレヒドール占領の端緒を開く、横崎二郎:北方防衛の盾、尾崎中和:航空戦闘の至宝、金子清市:地上作戦直協の雄、菅井清:南冥偵察行の偉功、瀬戸軫次:雷撃特攻橘軍神に続く、富永義夫:雷撃特攻の鬼神、斉藤博:長躯サイパン爆撃の勇士、丸山義正:比島特攻菊水攻撃隊長、小串脩:海上特攻隊長、緒方醇一:阪神防衛に散華、富田薫:歴戦沖縄に散る、奥山道郎:義烈空挺隊長、中島要:七生神雷隊長

このほかに個人感状拝受の七柱と九度の感状に輝く加藤隼戦闘隊中核の同期生にも触れられている。

本書には、全慰霊団体協議会瀬島龍三会長と偕行社山本卓眞会長の推薦文が添えられ、特に次世代の国民にも是非読んでほしいと訴えておられる。

以下に西宮生徒監名による巻頭の言葉を紹介しておく。


はじめに
西宮 正泰  
 私共は緊迫する国際情勢を背景に、昭和十一年末に定められた新軍備充実計画に基づき十二年、一躍まえの期の三倍の千九百名が陸軍士官学校予科(市ヶ谷)に入校した。間もなく学制改革となり、予科は陸軍予科士官学校、本科は陸軍士官学校と陸軍航空士官学校に分離された。別に経理部六十名が陸軍経理学校に入校となる。

 私共の期は、いわば軍備充実計画の先駆的役割を担いあと五十四期以降五十七期へと続くのである。

 支那事変三年目を迎え、太平洋の風波漸く高まらんとしつつあった昭和十五年卒業、陸は直ちに、空は各飛行学校で戦技を練成の上、勇躍部隊に着任した。翌年大東亜戦争勃発となる。大陸に南海にと、各部隊の戦力の中核として未曾有の国難に挺身した。この間中隊長から大隊長までの職責を遂行する。終戦の大詔を拝し無念の涙をのむ。志を共にした戦友の実に三分の一が戦陣に斃れ、あたら有為な若き命を国に捧げた。誠に痛恨の極みである。概ね二十二歳から二十六歳の若者であった。

 先に同期生相はかり、戦没者のため『鎮魂』を刊行し、慰霊顕彰の誠を捧げたところである。この度終戦六十年記念事業ととして、『鎮魂』姉妹編とし、戦没者の代表として二階級特進の栄誉に輝いた十四柱を特集し、その殉国の至誠を後世に残さんがため刊行することとした。
 その忠烈は萬世に燦として輝くものであり『萬世に燦たり』と題す。

 願わくば、次世代の国民が、命を賭した先人の犠牲のお陰で、平和を取り戻し、東亜の諸民族は独立し、わが国も世界屈指の経済大国に発展したことに思いを致していただきたい。
 平成十八年五月十日
(陸軍士官学校五十三期生会代表)
 
 発売元:展転社 文京区本郷1-28-36-301
         TEL:03-3815-0721
 定 価:1,890円 送料:340円


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継承したい同期生の繋がり「萬世に燦たり」(陸士53期会編)を読んで

(元陸上自衛隊東部方面総監・名幼47期 増岡 鼎)
   
 この本は、先の大戦で殉じた同期生の中から、軍神と称えられた十四人の記録を通して、彼らが如何にその任を果そうとしたかを、後世に伝えんとする陸士53期生の魂の記録でもある。特筆すべきはこの労作が、戦後60年を経た今日、齢八十の半ばを過ぎて発議され、1年そこそこの短時日で発刊されたことである。中心となられた方はもとより、現存される同期の方々の強固な繋がりを痛感させられてならない。
 
 私事にわたるが終戦を名古屋幼年学校で迎えたとき、生徒監は西宮正泰少佐であった。戦後自衛隊で初級幹部教育に従事したとき、手取り足取りして指導されたのが海老原久2佐であった。また師団の幕僚当時、情報と大局観の重要性を説かれたのが松金久知陸将というように、私は軍人・自衛官としてスタート、青春そして活動期のそれぞれの基礎を、53期の方々に与えて頂いたことになる。戦後、自衛隊に53期は佐官として迎えられたので、文字通りその中核として活躍されたのであった。
 
 現在の陸上自衛隊は、旧軍の経験者が絶えてから既に4半世紀が過ぎようとしている。戦後陸軍が諸悪の根源と看做され、その伝統の継承が危険視されて遠ざけられたのは否めない事実でもあった。ために今日偕行社の継承が、会員数の矮小化と相俟って見通しすら暗い現状にあると言えよう。
 
 冒頭触れたように本書には、先輩諸氏が如何に国の事を想い、如何に行動して散華されたか、残された同期生が如何なる気持ちで亡き友を偲ばれているかなど、余すところなく描かれている。生死を共にした男の友情を自衛官も学ばなくてはならない。自衛隊からの偕行会員はまだ500に達していないが、旧軍のよき伝統と散華された諸先輩の遺志を継承するためにも、一人でも多くの現役自衛官に本書を読んで貰いたい。そして将来は偕行社に参加して欲しいと切望する次第である。

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東幼38期第6学班
東幼38期第6学班(仏語)25名は「萬世に燦たり」掲載の3名を含み7名の戦死者を出した。当時の若々しく颯爽とした写真である。