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聞こえますか 班長殿! 
中井末雄班長を偲ぶ
    

大熊 昭三

 昭和19年4月。四十七期三訓付として中井班長殿着任。半年後、前田生徒監殿出陣。やわらかな京都弁のまじる話し方で、この方の怒声を聞いたことがない。復員後まとめた粗末な私のアルバムにある班長殿の写真に、私はこう付記している。『---最後に、名古屋駅頭まで見送ってくれたあの姿を終生忘れないだろう』観武臺を去った日のことである。
 
 昭和60年。レイテ島を訪れ、四十七期の名簿を供え、この地で戦死した前田オヤジの霊に合掌されたという。

 四十七期の『夏の集い』に、総会に、名古屋・東京と都合の付く限りは出席された。前田オヤジの五十年祭には高知までお越し頂いた。観武臺の絆を重んじ、情に厚く、温和。班長会にもまめに出席なさった誠実な方に、もうお会い出来ないのがつらい。

 班長殿の故郷、京都和束町。鷲峰山の中腹は宇治茶の本場である。そこでお茶作りに励んだ班長殿は五代目。平成15年の『夏の集い』に、名園を継いだご子息と一緒に出席され、丹精こめた銘茶をお土産に頂いた。あの雅びの香りを同期の誰もが忘れないだろう。

 肺気腫で苦しまれたが、おだやかな旅立ちのお顔であったという。ありがとうございました班長殿。ご冥福をお祈りいたします。