学科嫌い
(原題:おれは学科は大嫌い)
作詞者水島周平氏は、中幼10期生で名幼10期生でもある。東京府出身で、身長高く偉丈夫で親分肌。一種の威圧感を感ぜしめた。歩兵第五十二聯隊で任官したが、早く軍職を去り、昭和22年死去した。
その作詞「学科嫌い」(乞食袋)は今でも口ずさまれている。水島氏はこの作詞で書籍カバンを乞食袋と歌った廉で、学校当局から叱責され、外出禁止の処分を受けた。しかし、国漢文の教官は「これくらい作詞出来れば教官は満足である」と喜ばれたとか。
なお、「歩兵の歌」の作詞者加藤明勝氏も名幼第10期の同期生である。(以上名幼校史第二編外史;同期生の寄稿文)
備考:楽譜がないので、市販の「リパブリック讃歌」を参考にしたが、われわれは大分歌い崩していたはずで、違うと言う向きもあるかも知れない。
作詩:水島周平(中幼10期) |
曲譜:「リパブリック讃歌」の譜 |
中幼10期生「百日祭」による |
一 | 乞食袋を重そうに 喇叭の声で集まって 教室さしてゾロゾロと 行けば数学よ |
二 | シンコステータの三角が やっと済んだと思ったら 座標、原点、放物線 これが解析か |
三 | 理学博士じゃあるまいし 加速度なんか知るものか 頭が四角や三角に なるは重学よ |
四 | 釘かミミズか知らないが 頓珍漢の語学など やっても役には立たないよ 俺はナポレオン |
五 | 孔子や孟子が酒飲んで 一杯機嫌でほら吹いた でたらめなんか知るものか いやな漢文じゃ |
六 | 昔もむかし大昔 兼好法師や貫之が 寝言を書いた国文は 溶けた水飴か |
七 | 紙が踊って球がとぶ 煙が出たり火が消える 俺らが見たらこの理化も やはり切支丹 |
八 | 七千年の老いぼれが ほんとらしく述べ立てる 誰が真面目に聞くものか ひどいほら吹き奴 |
九 | 石が黒いも青いのも さっぱり俺には無関係 この世の中に山河の あるは当たりまえ |
十 | 下手な理屈をこねまわす 三段論法帰納法 ギリシャの昔の馬鹿者が 遺したやくざもの |
十一 | 大工や左官のまねをする 図学なんか要るものか 呑気な奴の仕事には 至極適当じゃ |
十二 | 山の形や水の色 写真の便利も知らないで 珍しそうに紙に画く 画学は間抜け者 |
十三 | 忠孝仁義と今さらに 勿体らしく言うけれど 催眠術に違いない 直ぐに眠くなる |
十四 | 世が逆さまになったならば 時文が役に立つだろう この真ッ直ぐの世の中にゃ まるで不必要 |