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仰げば巍々たる

 「仰げば巍々たる」は、「西豺狼の」「待たるる哉や」「白皚々の雪の中」「要塞砲兵の歌」と並んで中幼5期生(20期)が編集した「思い出草」に発表されたもので、時これ明治39年2月、文字通り「百日祭」のための歌集でであった。
(軍歌集 雄叫より)

作詩:高頭虎四郎(中幼10期)
作曲:「ああ玉杯」の譜

メロディー

仰げば巍々たる 市ヶ谷の
九重深き雲の上
玉葉の御身いや高く
北白川の水清く
久邇の光を浮かぶなる
誉は高し我が武寮


立たば登らん富士の峯
斃れて已まん大丈夫の
学の窓は年逝きて
あと百日の城ごもり
やがて皐月の青葉かげ
君と別れん西東

国のためには北海の
雪ふみ別けん旭川
玄海波は荒くとも
要塞守らん対馬沖
風吹く夜半に村松の
月下に磨かん我が剣

砲工輜重はた騎兵
行く道々も異なりて
都に我は残るとも
塵には染まじ白梅の
薫りを永遠に変えざらん
誉れを揚げん後の世に

楊柳の曲いま止みて
鳴くや一声ほととぎす
征衣の袖を分かつとき
顧みせなんしかすがに
五年睦みし窓の友
ありし昔の偲ばれて

腰には剣手には筆
光り栄えある黒帽の
学びの庭に入りしより
胸に希望の輝きて
若き血潮にかられつつ
隙ゆく駒に鞭うちぬ

太田の流れ水白く
宮城野原に秋高し
阿蘇の煙を眺めては
棚引く空に思い馳せ
金鯱の光り楠のかげ
思い出多し過去の夢

習志野の原草緑
わが駒飼わんときは何時
露営の夢や偲ばれん
月影冴ゆる森かげに
ああ愉快なる年月は
早くも茲に逝かんとす

あと百日を惜しみつつ
歌う弥生の春の宴
記せよ吾が友長しえに
学びの昔顧みて
行けよ吾が友勇ましく
護国の剣手にとりて


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