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橘 中佐(


作詞:鍵谷 徳三郎
作曲:安田 俊高

メロディー

嗚呼悲惨惨の極
父子相抱く如くにて
共に倒れし将と士が
山川震う勝鬨に
息吹き返し見かえれば
山上すでに敵の有

 二 飛び来る弾丸の繁ければ
軍曹再び起ち上がり
無念の涙払いつつ
中佐を扶けて山のかげ
辿り出でたる松林
僅かに残る我が味方

阿修羅の如き軍神も
風発叱咤いま絶えて
血に染む眼うち開き
日出ずる国の雲千里
千代田の宮を伏し拝み
中佐畏み奏すらく

 四  「周太が嘗て奉仕せし
儲けの君の畏くも
生れ給いし佳きこの日
逆襲受けて遺憾にも
将卒数多失いし
罪はいかで逃るべき

さはさりながら武士の
取り佩く太刀は思うまま
敵の血汐に染めてけり
臣が武運はめでなくて
ただ今ここに戦死す」と
言々悲痛声凛

中佐はさらに顧みて
「我が戦況は今いかに
聯隊長は無事なるか」
「首山堡はすでに手に入りて
関谷大佐は討死」と
聞くも語るも血の涙

我が勝鬨の声かすか
あたりに銃の音絶えて
夕陽遠く山に落ち
天籟げき寂静まれば
闇の帳に包まれて
あたりは暗し小松原

朝な夕なに畏くも
うち諳じたる大君の
勅諭のままに身を捧げ
高き尊き聖恩に
答えをまつれる隊長の
終焉の床に露寒し


負いし痛手の深ければ
情け手厚き軍曹の
心尽くしも甲斐なくて
英魂ここに留まらねど
中佐は過去を顧みて
終焉の笑みを洩らしけん


君身を持して厳なれば
挙動に規矩を失わず
職を奉じて忠なれば
功績常に衆を抜き
君まじわりて信なれば
人は鑑と敬いぬ


十一 忠肝義胆才秀で
勤勉刻苦学すぐれ
情けは深く勇を兼ね
花も実もある武士の
君が終焉の言蔵には
千歳誰か泣かざらん

十二    花潔く散り果てて
護国の鬼と盟てし
君軍神と祀られぬ
忠魂義魄後の世の
人の心を励まして
武運は永久に尽きざらん

十三 国史伝うる幾千年
ここに征露の師を起こす
史ひもときて見るごとに
わが日の本の国民よ
花橘の薫りにも
偲べ群臣中佐をば

 

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